Joel's Reinforcement Library 


「あなたは離脱症状は直ぐ楽になると言っていた。
でも禁煙したまさにその日と同じように苦しい!」
 


最近、禁煙を始めて8日目のクリニック参加者から上記の暖かい言葉をもらった。ご記憶と思いますがクリニックでは禁煙を始めて三日間耐え忍べば生理的な離脱症状は段々と弱まり二週間で離脱症状が完全に消えると説明しています。

生理的な離脱症状については正確な予測ができますが、心理的な離脱症状はいつでも起こり得ます。この人が感じた渇望が一週間前と同じく辛いものだったことはあり得ます。欲求は同じように強いかもしれませんが、違いがあります。以前にその欲求があったときには彼は打ち勝つために打てる手はありませんでした。もし彼が数分間その欲求に耐えればその欲求は過ぎ去ります。しかし、心理的な欲求は元喫煙者の心理にかかっています。生理的な痛みと心理的な苦痛の違いを例示するにはありふれた歯痛を見てみればわかります。

虫歯はひどい痛みを起こします。歯科医がなぜ歯が痛いのか説明しても歯痛はおさまりません。あなたはなぜ痛むか知っていますが依然として痛みは続きます。肉体的な痛みを理解することは痛みを無くすことに繫がりません。もうひとつの角度から説明すると、あなたが歯科医に行き、虫歯があることを知ります。彼はドリルをかけて詰め物をします。ドリルはとてもひどい経験になる可能性があります。全て終わり痛みが治まります、しかし医師のドリルの音を聞くと、たとえそれが一年後でも痛みを思い出して身が縮みます。あなたは単に音に対して反応しているのだと気付けば、本当に痛みにさらされることは無いと知り、その反応は終わります。恐れの原因を理解することが心配とそれに伴う痛みを軽減します。

今日起こるタバコへの欲求は記憶にある引き金への反応なのです。あなたはタバコを吸わずに初めて何かをしたり、経験したりしているのです。それはバーへ行くことかもしれないし、結婚式に出席すること、飛行機に乗ることかもしれません。人に会うことかもしれないし過去にいつもタバコをくわえていた場所へ行くことかもしれません。それは何か耳に入る音かもしれないし、なじみのある香りかも知れません。嗅覚は過去の感情を呼び覚ます強力なメカニズムです。 

ですから、きょうタバコが欲しいと思ったら周囲を見回してなぜこの時、この時間にタバコが頭に浮かんだのか考えてください。大したことの無い出来事への反応により引き金が引かれたと判れば、タバコにノーと言えばよいのです。あなたは何が引き金を引いたかを理解するだけでよいのです。欲求は過ぎ去るでしょう。次回同じような状況に遭遇してもタバコのことは頭に浮かびもしないでしょう。元喫煙者としていかに新しい事態に直面するかを学んだのです。

禁煙は学習経験です。あなたが欲求に打ち勝つたびに元喫煙者としてのステータスを脅かす障害物を乗り越えるのです。時が経つにつれて、障害物は品切れになり人生をより幸せにまた健康に送れる人間になるのです。元喫煙者でいるために覚えておき習慣とすることは…決してその一服を吸わないで!


翻訳:西田季彦 

© Joel Spitzer 1982, 2011